2021/06/30 Michelle Reed
2021/06/30 Michelle Reed

サイクリストのためのタンパク質

タンパク質は3種の主要栄養素のひとつで、最適なサイクリングパフォーマンスのために欠かせないものです

サイクリストのためのタンパク質 サイクリストのためのタンパク質

ロードレースのゴール前スプリントで競い合ったり、あるいはフルトライアスロンの初完走を目指したりする人は、誰もが可能な限り優れたサイクリストになることを望んでいるはずです。あらゆるトップレベルのライダーにとって、栄養摂取は、実際にバイクを漕ぐトレーニング、それ以外のトレーニングと並んで、パフォーマンスプランの重要な一部です。よくできた栄養摂取計画は、ポディウムの最上段にたどり着くために効果的なだけでなく、肉体をそのレベルに到達させるために不可欠の手段なのです。

タンパク質とは何でしょうか、そしてどうして重要なのでしょうか?

タンパク質は最適なサイクリングパフォーマンスのために必要な3種の主要栄養素のひとつです。タンパク質の構成要素はアミノ酸として知られています。アミノ酸は合計20種あり、そのうち9種が食物から摂取しなければならない必須アミノ酸です。タンパク質は、あらゆる細胞や筋肉組織だけにとどまらず、ホルモン、免疫、および酵素(体内の反応の促進に役立つタンパク質)が機能するために欠かすことができません。

タンパク質は、筋肉組織を維持し増強するだけではなく、筋肉の収縮と動きやヘモグロビン(酸素を全身に運搬する血液中のタンパク質)の形成の支援、消化中の化学反応の促進、遺伝子情報の調整と発現の支援、さらには免疫機能の補助まで行います。こうした機能はいずれも、トレーニングやレースで最大限の成果を得るのに極めて重要になります。

サイクリストのためのタンパク質 タンパク質は、体内の重要な機能の多くを促進します。

サイクリストにとって必要なタンパク質の量はどれくらいですか?

アスリートが、トレーニングの量と強度に応じて大量のタンパク質を必要とすることはよく知られています。これは、エクササイズ中の筋肉の損傷として現れるタンパク質構造の修理と入れ換えのため定常的に必要なためです。タンパク質の摂取は、性別とは無関係に、常に体重の単位kgに対するgで設定されます。一般的な1日あたり推奨摂取量(RDA)は、平均的な人で体重1kgあたり0.8gとされています。

しかし、日常的にエンデュランスサイクリングを行っている人の1日摂取量は1.2~1.8g/kg体重/日まで大きく増加します(1)。ただし、トレーニングプラン、目標、および個人的必要性に応じて、この範囲は変化します。

以下に、各種アクティビティレベルに応じた範囲の例を示します。
  • ホビーアスリート: 1.2~1.4g/kg体重/日
  • 十分に訓練を積んだエンデュランスアスリート: 1.4~1.6g/kg体重/日
  • トップエンデュランスアスリート: 1.4~1.8g/kg体重/日

高タンパク食には発熱効果があるため、体重減少用として使用されます。消化に大量のエネルギーを消費するうえ満腹効果もあり、摂取カロリーを自然と抑制するためです。カロリー制限中は、タンパク質摂取量を2.0g/kg体重/日を超えるまで増やし、筋肉量を維持するためレジスタンストレーニングを組み合わせます(2)。

ただし、メリットが得られるタンパク質の摂取量には限界があります。研究によれば、3.4g/kg体重/日を超える摂取量は、メリットがなく不必要です(2)。

タンパク質なら何でもよいのですか?

いいえ。タンパク源は、完全と不完全の2種のカテゴリーに分けられます。完全タンパク質は、肉、魚、鶏肉、卵、ほとんどの乳製品などの動物性タンパク質から得られるもので、必須アミノ酸をすべて含んでいます。

一方、不完全タンパク質は、豆、一部の穀物、特定種類のナッツやマメ科植物など、植物源から得られるものです。不完全タンパク質は、必須アミノ酸のすべてを含んでいるわけではないため、とり方に工夫が必要で、完全タンパク質と組み合わせるのが最良です(3)。

たとえば、豆ご飯だけを食べるのではなく、豆乳ヨーグルトかホムスとピタパンに、ナッツや種を加えたものを組み合わせれば、必須アミノ酸をすべて含むことができます。チアの種、麻の種、そしてキヌアの種のような一部の植物源は、必須アミノ酸をすべて含んでいます。

タンパク質を摂取するのは、1日の中でいつがベストでしょうか?

タンパク質は、1日を通じて3~4時間ごとに1回摂取する場合に最もうまく消費されます。こうすることで、タンパク質の機能を最大限に発揮させることができ、1日を通じて血糖値のバランスを取ることができます。

サイクリストとして必要な1日量を摂取するには、1日のすべての食事と消費するスナックすべてにタンパク源を含めるようにします。これは、毎食ごとにプロテインパウダーを摂取する必要があるということではありません。毎日のタンパク質は、食べ物の好みに合わせてさまざまなタンパク源から取るべきです。

良質なタンパク源の例としては次のようなものがあります:
  • グラスフェッドの牛肉
  • 鶏肉
  • 乳製品
  • 豆腐とテンペ
  • ナッツと種(特に、カボチャ、麻、ひまわり、チア、およびゴマの種)
  • マメ科植物と豆
  • キノア、玄米、ソバなどの穀物
  • スピナッチやブロッコリーなどの野菜
サイクリストのためのタンパク質 タンパク質は、動物性の食品と植物性の食品の両方に含まれています。

サイクリング後の回復にタンパク質はどのように役立ちますか?

回復のためのタンパク質の利用はしばしば誤解されています。トレーニングの成果を収穫し、回復を早めるために、トレーニング直後にタンパク質を取ることが重要だということはよく知られています。しかしながら、これは部分的に俗説が含まれています。タンパク質は筋肉の炎症を抑制する(回復効果が期待できる)ものではなく、タンパク質が短時間での回復を「スピードアップ」するかどうかについては、決定的な結論は出ていません。ただし、タンパク質は、十分な炭水化物が摂取されなかった場合に、グリコーゲン回復(エネルギーの蓄積)を促進するという説があります(これは依然として議論されています)。

むしろ、タンパク質は、主に個別のトレーニングセッションの後で筋タンパク質合成(MPS)を促進するために必要です。MPSは長期的なトレーニング順応を最大化する鍵であり、希望の結果を得るためには多くの時間、日数、または数週間が必要な場合があります。

回復に最も役立つタンパク質の種類は何ですか?

すでに見たように、タンパク質はさまざまな種類があり、エクササイズ後に希望する効果を促進するためには、特に望ましいタンパク源があります。多くの研究によって、ホエープロテインがMPSを最大化するタンパク源として優れていることが示されています。これは、ホエープロテインが、即効性があり、消化されやすく、重要なアミノ酸、特にロイシンを多く含むためです。ロイシンは、(筋肉組織を構築する)アナボリック信号を高めることによって、MPSを促進します。

ヴィーガンすなわち植物由来食によるサイクリストは、ホエーの代わりに各種の植物タンパク質の組み合わせによるパウダーで大きな効果が得られますが、ロイシンの含有量は少なくなります(3)。

では、毎回のトレーニングセッションの後にプロテインパウダーを摂る必要はありますか?

いいえ、必ずしも常に必要なわけではありません。目標によって変わってきます。プロテインパウダーは大変便利ですが、ほとんどのトレーニングデーについて、自然食品からの高品質タンパク質を20gまで含むバランスの取れた食事で十分です。高強度のセッションまたはストレングスセッション終了後1時間以内にプロテインパウダーを摂るのは、トレーニングの補助として、また効果を高めるために有益なことがあります。

研究によれば、そのようなセッションにつづくタンパク質摂取戦略として最良なのは、約2~3時間間隔で4回に分けて、20gのタンパク質を摂ることです。この摂り方は、10gのタンパク質を1.5時間ごとに8回、または40gのタンパク質を6時間間隔で2回摂る方法よりも有効である可能性が高いという研究結果があります。

サイクリストのためのタンパク質 タンパク質は、短期的に体力を回復させることよりも、長期的にトレーニングに順応してゆく過程に役立ちます。写真家:アダム・モルカ
著者について:

ミッシェル・リードは、ミドルセックス大学において、栄養学と栄養療法で理学士号(優等学位)を取得した栄養学者です。自身マウンテンバイカーとしてエンデュランス系スポーツに興味を持つミッシェルは、スポーツ栄養学をザールラント大学大学院で学び、ハイパフォーマンススポーツの理学修士号を授与され、また、CISNから総合スポーツ栄養学の修了証書を得ています。

現在は、特にロードサイクリストとマウンテンバイカーを初めとする世界中のアスリートに、高度な栄養学的知見に基づいたアドバイスやコンサルティングをおこなっています。

ミッシェルのウェブサイト(www.mreednutrition.com)とソーシャルメディアプラットフォーム(@mreednutrition)に詳細があります。

参考文献:
  • Jäger, R., Kerksick, C. M., Campbell, B. I., Cribb, P. J., Wells, S. D., Skwiat, T. M., ... Antonio, J. (2017). International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise.(スポーツ栄養学国際学会論文:タンパク質とエクササイズ) Journal of the International Society of Sports Nutrition(スポーツ栄養学国際学会誌), 14(1), 20.
  • Protein series(タンパク質シリーズ): Antonio他(2014、2015、2016、2016)
  • van Vliet S, Burd NA, van Loon LJ. (2015) The skeletal muscle anabolic response to plant- versus animal-based protein consumption(植物由来タンパク質/動物由来タンパク質の摂取時における骨格筋のアナボリック反応) J Nutr. 145:9:1981-91.
  • Macnaughton LS, Wardle SL, Witard OC, McGlory C, Hamilton DL, Jeromson S, Lawrence CE, Wallis GA, Tipton KD. (2016) The response of muscle protein synthesis following whole-body resistance exercise is greater following 40 g than 20 g of ingested whey protein.(全身レジスタンスエクササイズ後の筋肉タンパク合成の反応は、ホエープロテイン40g摂取後の方が20g摂取後よりも大きい)。Physiol Rep, 4(15).
  • Areta, J. L., Burke, L. M., Ross, M. L., Camera, D. M., West, D. W. D., Broad, E. M., … Coffey, V. G. (2013). Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis.(レジスタンスエクササイズからの長期的回復におけるタンパク質摂取のタイミングと分配量が筋原線維タンパク合成を変化させる。) The Journal of Physiology(生理学会誌), 591(9), 2319–2331.
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